「ああ、そうだ」
「耳、ほんもの?」
興味深げにキーヤの長く尖った耳を見る。
(人間の子供には特に優しくっ!)
頭に響くリズの声。
キーヤは、ぎこちなく子供向けの笑顔をつくり、答えた。
「あ、ああ、本物だぞ」
子供に良く見えるように首を傾け、子供の目の前で耳を揺らしてやる。
「すごいっ、ほんものだっ」
それだけで大喜びする子供。
動いた、本物だと、近くにいた親に笑顔で報告する。
そのはしゃぎ声を聞いて、別の子供たちが集まってきた。
こちらは親の調子が悪くなって、連れてこられた子供。
楽しいはずの旅行の最中に降りかかった災難、その災難の中で出会った珍しいもの。
子供たちはキーヤの前に立ち、優しいエルフがいたと期待の目で見つめてくる。
キーヤは子供たちの目から逃げられず、もう一度耳を動かしてやった。
「わあー」
すっごく喜ぶ。
喜ぶのはいいが、自分こんなことをしている時ではないとキーヤは困る。


