魔王さま100分の2


「有償の医院は別にありますが、そこは重傷者や都市住民のための施設でして……」

それ以外の者が駆け込んでも、
治療費がかかる上に同じぐらいは待つことになると兵士は言った。

「あの……」

ヘナが、キーヤを見上げてきた。

頭巾がずれてガラス色の瞳、さらに銀色の前髪が外に出る。

それを兵士からは見えないように頭巾を直してやってキーヤ。

「どうした?」
「私なら、お手伝いできますが……」

ヘナが小声で伝えてくる。

「それは、」

だめだと、
キーヤが言おうとするとまた頭巾がずれた。

銀の前髪の下で、許しを求める瞳がじーっとキーヤを見つめる。

「うっ」

キーヤは、おされる。

聞こえ続ける子供の泣き声。
子供をなだめる親の悲しげな声。

治療の順はまだひとつも進んでいない。
ヘナの手と背がそわそわと動く。