「有償の医院は別にありますが、そこは重傷者や都市住民のための施設でして……」
それ以外の者が駆け込んでも、
治療費がかかる上に同じぐらいは待つことになると兵士は言った。
「あの……」
ヘナが、キーヤを見上げてきた。
頭巾がずれてガラス色の瞳、さらに銀色の前髪が外に出る。
それを兵士からは見えないように頭巾を直してやってキーヤ。
「どうした?」
「私なら、お手伝いできますが……」
ヘナが小声で伝えてくる。
「それは、」
だめだと、
キーヤが言おうとするとまた頭巾がずれた。
銀の前髪の下で、許しを求める瞳がじーっとキーヤを見つめる。
「うっ」
キーヤは、おされる。
聞こえ続ける子供の泣き声。
子供をなだめる親の悲しげな声。
治療の順はまだひとつも進んでいない。
ヘナの手と背がそわそわと動く。


