しばらくすると、聖堂から兵士が戻ってきた。
この兵士もまたヘナの祈りを見て、態度をやわらげる。
「お祈りの最中に失礼します」
ことわりの言葉を先にくっつけて、兵士は話す。
「エミリオ神父は、今は教会ではなく、この近くの診療所におられるようです」
「診療所?」
「あそこです」
飛行杖で広場の一角を指す兵士。
本当に教会のすぐ近く、平屋だがこれもなかなかに立派な診療所が建っていた。
「観光中に怪我をしたり病気にかかった人達が運ばれる診療所です」
「神父様が中でお勤めに?」
訊いたのは、ヘナ。
「はい、軽度のものならばその場で完治されます」
なるほど神の奇跡を具現できるレベルの人間か、とキーヤはひとつ頭にいれた。


