他の人間には聞かれないように小さな声で囁いている。
キーヤは、へナの祈りが途切れるのを待って訊ねた。
「人間が建てた教会に来ても祈るものなのか?」
「祈るものです」
ヘナは、淀みなく答えた。
そして、また祈る。
兵士が戻って来るまで、何度でも繰り返しそうだ。
キーヤは、ヘナが祈りに集中している分、気をはって周囲を観察する。
兵士はすでに聖堂の中に入っている。
代わって、教会服を来た人間達が数人、入り口の外に出てこちらを見ている。
敵意はない。
祈るヘナを見て、安堵している様子。
周囲の人間の目も、キーヤを見てうっとりとなる主に女の視線が半分、
ヘナが祈り始めると同時に柔らかくなったのが残り半分。
キーヤは、またひとつへナに助けられたと感じつつ、ヘナの背中を守る。


