「ヘナに危険があると判断したなら、その場で交渉の破棄を許す。ヘナの保護を最優先にして退け」

魔王さまが念を押す。

「私なら、大丈夫です」

ヘナは、頭巾で隠れた顔で言う。

「うー、やはりヘナを使いに出すのは心配だぞ」

魔王さまは、がばっとヘナに抱きついた。

ローブごと抱きしめられて、あうあうとヘナは両手をふる。

背中を中心にしてへナのローブが乱れ、そのままヘナと魔王さまはもつれて倒れる。

シルキスは、倒れるふたりを片目で見ながらキーヤに言った。

「おまえに託すものはこれで全部だ。やれるな、とは問わない。やれないと思ったら見栄を張らずに戻ってこい。それで笑いも責めもしない」

「おうっ」

キーヤは、自分にかけられた期待と責任の大きさを自覚した。