「おおっ」

素晴らしいと魔王さま。
キーヤは、こめかみをひくつかせる。

「いや、そうではなく」
「なく?」

魔王さまの興味津々の顔が、間近でキーヤに迫る。

キーヤは頑張り、慎重に必要な言葉を選ぶ。

「人間が、この信書が魔王さまの手によるものだと信じるのかどうかが、問題です」

「むむむ、やはり私の字にかけられた呪いが……」

「一度見れば二度と忘れませんけどね。支持者もそれなりにつく気がします」

シルキス自身、魔王さまの字を見るのはかなり好きだ。

塔にいたころの思い出とあわせて、楽しい気分になる。