隣で中間連中が声高に話している。

「いや、酷いもんや!大きな声じゃ言えへんが、関白様も可哀相や!」
「ああ、御眷属全てが撫で斬りで、投げ込まれた穴を『畜生塚』じゃと!浮かばれんわ!」
「でも惜しいのう!」
「何が?」
「あの美童中の美童と謳われた不破万作様も塚の中とは!」
「お前、気があったのかえ?」
「そ・・・りゃ、あんな可愛いお小姓なら、手でも足でも切るわい!」

 この時代、腕の小股を小刀で切って見せるのは、町人に広がった求愛の表現であった。

 一人の中間が誇らしげに笑った。
「へへ・・・儂は万作様と話したことがあるわいな」
「え!ほんまか?」

「それに万作様と最後の契りを結んだお方も知ってるわい」
 みんなおおーっと歓声を上げる。隣の京雀も身体を乗り出した。
「関白様やないのか!」
 その中間は空の杯を持って揺らす。近くの者が徳利を持ってなみなみと注いだ。

「捨吉どん!聞かせろや!そのお方の話!」