修理と五部浄は構えを取って睨み合っていた。

 静音や庄左右衛門の方を見ようものならその時が最後になる!心を無にしようとするが、集中出来なかった。
(・・・やはり、駄目か・・・)

 修理は死を覚悟した。
 静音!どうか生き残ってくれ!
 南無八幡大菩薩!

 真剣での立ち合いでは剣を無意味に振っても疲れるだけである。相手に当たっても太刀筋が悪ければ斬れないのだ。

 古来からの武道は、斬れば必ず相手を真っ二つにする工夫を重ねてきた。生半可に斬っても致命傷でなければ相手は攻撃してくる!
 斬る時には、足の裏、膝、腰の三点を揺らぎ無き様に据えねばならない。それを瞬時の動きで完璧に行うのは、心技一体となっていなくては駄目なのだ。

 五部浄の正眼の構えに一分の隙もない。そして少しずつ剣の中に彼の身体が隠れるように思えてくる。既に死生の狭間に入っている!
(来る!)
 修理は背筋がぞぞと寒くなった!

 八艘の構えのまま飛び下がった!だが五部浄も前に飛んでいた。修理が肩を廻し袈裟に五部浄の肩を切る。だが、その前に正眼の剣が修理の左肩を突き刺した!
「ぐっ!」
 修理は痛みで左手を柄から離してしまった!五部浄の勝ちを見た顔が間近にあった!

「見たか!青二才!」