静音は修理に背を向け、はあはあと息を突きながら膝を崩して伏し、身体を両手で支えていた。

 修理はその後ろで静音の反応を待つ。左手の手の平にはまだ暖かい静音の精が残る。
「・・・お前なんか本当に嫌いじゃ!」
 涙声だった。
「では帰るか?」

 返事次第ではもっと責めて、帰ると言うまで続けようと思っていた。だが・・・儂の我慢もいつまで続くか・・・股間の一物はどうしようもなく怒張していた。

「見てやる!」
「何!」

「・・・お前がその沙悟浄(さごじょう)だかという奴に膾(なます)にされるのを見てから帰る!」
 きっと修理に向いた。
「お前のためではない!新右衛門おじ様の為じゃ!・・・お前が果てたことをせめて墓前に報告せねばならぬ!そいでお前の菩提を共に弔ってやる!」
 修理は思った。それでよい・・・

 次の日、修理は自分の剣の手入れをしていた。修理の刀は数打ち物(大量生産されたあまり質の良くない刀)であり、どこまで戦いに耐えるか分からなかった。

 この前に預かった太刀は庄左右衛門に返し、研ぎに出されていた。付いた血糊の油を落とさないと、そこから黴が生え錆びることとなる。

 庄左右衛門が白鞘の太刀を持ってやって来た。