三人の処刑人達の骸を隅に整えて、修理は抜け穴の上の床の戸を開け、下に降りた。柳の間を見やりながら降りると、まだ息のあった主膳が、万作に手伝われて腹に脇差しを突いた所だった。

 関白が言った。
「主膳!見事じゃ・・・すぐ我等も逝く!待って居れ」
 そして四人は修理の去った暗がりの方に頭を下げた。

 最後に万作は懐から出した小さな匂い袋をくれた。
 修理はその小袋を嗅いだ。・・・確かに万作の匂いじゃ・・・
 このよにて
 にほいのこせしひとのかを
 おもいおこせしときもあるかも

 修理にとって、万作とのことは夢の様な事であった。静音という愛しき人がいるのに。
 万作は修理を翻弄して一瞬のうちに通り過ぎていった春雷だった。

(静音に会うことはもう無かろうが、会ったとしても黙っていよう・・・)