庄左右衛門が言った。

「静音殿。しばしお待ちくださらんか」
「待てとは!」

 庄左右衛門は、前の書面をすっと前に滑らせた。静音は部屋に入りそれを読む。裏には男と女の絡みを思わせる落書きがしてある。

 意趣状
 海道修理殿
 弟佐久間一雲の仇
 尋常に勝負申し入れ候
 御加勢いかにてもご自由
 七月二十二日卯の刻(午前六時頃)
 天寧寺(てんねいじ)境内
      佐久間五部浄