「な、何をされる!静音殿!」

 庄左右衛門が驚いて叫んだ。

 静音は真っ黒い顔に目を憎しみでぎらぎらさせて肩を震わせていた。
 左手で大刀を握る!

「修理!お前を今度こそ斬る!表に出ろ!」
 修理は尻餅を突いて、鼻の血を押さえながらぽかんとしている。

 捨吉が割って入った。
「し・・・静音様、お待ち下さい!御意趣があったのですか!儂には知り合いと言わはった!それを知らずに貴方を案内したのは馬鹿じゃった!儂を斬ってから修理様とおやりなはい!」

 静音は刀の柄を握ったまま、捨吉の顔を見てふうふう言っている。捨吉を斬ることは出来ない。

 静音は庄左右衛門に向かって手を突いた。
「前野様!お願いで御座います!この修理は私を裏切って国を逐電した憎き奴!どうか・・・お庭をお貸し下さい。果たし合いを申し入れます!」

「修理殿・・・それは真か?」
「はあ・・・でも裏切った分けでは・・・」
「何をやったのじゃ!」

 静音が叫んだ。
「連れて行けと願ったのにお前は!・・・俺を抱いてそのまま去った!俺を騙したのじゃ!」