翌日、庄左右衛門は昼頃に伏見の屋敷に帰ってきた。

 馬の轡を取って捨吉は、
「お殿はん、お暑いなか、お疲れはんです。修理様は?」
「宇治の平等院に寄って、阿弥陀如来の前で少し座禅をするそうじゃ。午後には帰るじゃろう」
 捨吉が報告した。
「ほう!修理殿にお客とは」

 修理は平等院の如来の間で読経の声の中、静かに瞑想をしていた。暑い日だったが、時々堂内を駆け抜けて行く風が心地よい。

(万作殿はこのような一陣の風だったのだ・・・儂にはまだ静音がいる。どうしていることか)