「そうだ。
この国を立て直すために、わたしは出かける。
他の者には、旅に出たことを隠せ。
王は病気になられたとでも、言うがよい」

「どうして、旅に出ることを隠すの?」

有香は聞いた。

「わたしが旅に出ることが知れ渡れば、妖怪たちの耳にも入る。
そうすれば、この国の人々の命が危険ではないか?」

「あっ、そっか…」



「分かりました。
アレン様、お連れの方、お気をつけて下さい」

シオンが言った。

「あぁ。
任せたぞ、シオン」

「はい」

シオンの返事を聞くと、アレンは部屋を出た。

有香はシオンにペコリと頭を下げて、急いでアレンを追った。


「ユカ様、明日の朝出発しますか?」

「今、すぐでしょ」

「ですね」


アレンは部屋からマントや食料などを出した。

茶色いマントを有香に渡し、食料などの入ったカバンを持った。



アレンは城の大広間に家臣や料理人など、城で働くすべての人を集めた。

「聞いてくれ。
この女性はシャリアン様のご子息、ユカ様である。
今夜、わたしたちは旅に出る。
この国を救うためだ」

「アレン様…」
「アレン殿…」

人々がアレンを見詰めた。

「わたしが旅に出ている間、国のことはシオンに任せることにする」

人々が不安気に視線を交わすのが見えた。

そして、アレンの右にいる、シオンを見た。