事実が知りたいという欲望と、今を消し去りたくないという執着心。

二つが混ざって寂寥感に近い感情が胸を支配していく。
潤がゆっくりと私の顎に手をかけた。

甘やかに二つの唇がゆっくりと重なっていく。
キスをするたび、いつだって、ファーストキスのときと同じくらいドキドキする。

いつか、これに慣れる日って本当に来るのかしら?
唇が離れ、再び潤の肩に頭を乗せる。

「どこか、遠い世界の話だと思って聞いてくれる?」

私はゆっくり頷いた。
ポンっと、潤が私の頭を叩く。

二人で、近くの石製のベンチに腰を下ろす。

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昔々あるところに、眉目秀麗な魔王様が住んでいました。
魔界で大人気の魔王様ですが、いくつになっても浮いた話が出てきません。
心配した側近たちが、彼に理由を聞きました。
魔王様は小ばかにしたように笑い飛ばします。
「俺の運命の相手は人間界に居る」
その漆黒の闇を閉じ込めたような瞳は、そのとき、初めて懐かしさを帯びた輝きをほんの一瞬放ちました。