女の先輩から、闇の産婦人科を教えてもらった。

私達のような連中が中絶しに行く所だ。

保険証も何もいらない。

10万円さえ払えば即してくれる。



私はナオキに付き添われ、そこへ辿り着いた。

そこには冷たく、薄暗く、誰もいない待合室があった。

受付の窓口もカーテンが閉められ

『ご用の方はインターホンを押して下さい』

と、汚い字で書いてある。

ただでさえ不安なのに、もっと不安になる。


インターホンを押すと、窓口からではなく、廊下をペタペタと歩いて年配の看護師が出てきた。

「はいはい、どうしました?中絶?」

「え?あ、は…い…」

「10万やけど?」

「あ、はい…」

「じゃ、こっち入って!」


何も言ってないのに…

闇と呼ばれるだけのことはある。


ナオキは、不安げに奥へ進む私に

「頑張れよ!」

と、声をかけた。


何を頑張るのか…