それでもわたしは生きている

それは…
好きな人がいなかった…
そういうこと…



私は数年振りに好きな男ができた。



別にヒロアキとは付き合うわけじゃない。

でも、私はもうコウジと…

好きじゃないと分かった男と一緒に過ごせない。



「ごめん…コウジ…」

「オレ、待っとってえぇかな?お前にオレが必要になったらいつでも呼んで!オレ待ってるから」

「必要に…ならんかったら?」

「なるまで待ってる!」

「………」

「その日まで、このテープ貸しといて!」


それは、ドライブの時いつも聞いていた私のお気に入りの音楽テープ。


「じゃ、さよなら…」


私はこの時、ナオキが私と別れた時の気持ちがなんとなく分かったような気がした。


次に好きになれる相手がいる人間は、それまでの相手との別れにはなんの悲しみも溢れてこない。

思いも寄らない別れを突き付けられた人間が、全ての別れに関する悲しみを引き受けてくれるから…


私に芽生えた少しの罪悪感は、明日職場でヒロアキに会えるという喜びにすぐに書き消された。