それでもわたしは生きている

違う…

正確にはナオキと同じ性格を持つ

『ヒロアキ』

という名の男だ。



この春、私の働くスーパーの精肉コーナーに遠い街から転勤してきた3つ年上の男。

誰にでも気さくに声をかける人懐っこい男。

休憩時間が、ヒロアキと私はいつも同じだった。

話していて感じる、同じ空気…

ナオキとかぶるセリフ…

だからといって、なんてことはない。
私にはコウジがいる。

ゴールデンウィーク。

ソウタはいつものように母の元へ遊びに行った。

義父が亡くなってから、1人でいる母はソウタが来るのを心待ちにしている。


自由になった私は、その日はバイトの子が休んで人がいないというので残業をした。

仕事が終わり休憩室で一服していると

「あれ?珍しい!残業?」

ヒロアキだ。

「はい、もう帰りますけど」

「そうなん?オレも終わりやねん!車やから送ったろか?」

「ラッキー!」

「おぅ!ほな駐車場で待っといて!」




「もう8時やで!子供腹空かしとんちゃん?」

「あ、今田舎帰ってて、誰もいないんです」

「そうなん?ほな飯でも食いに行く?」

「スギモトさんのおごりでですか?行く行く!」