必死で生きてきた。
ソウタとふたりきりで…
そのソウタが今、ネクタイを締めて、順番に立上がり覚えたセリフを1人で叫んでる。
泣かずにはいられない…
でも泣かない!
家の前でソウタにもらったカーネーションを持って、写真の撮り合いっこをした。
私が片手を伸ばし、2人のアップも撮った。
丁度、同じアパートから住人が出て来た。
挨拶くらいしかしたことのない40代位の男性が
「良かったら撮りましょうか?」
と、ふたりきりでソウタの卒園を満喫している私達に声を掛けてくれた。
ちょっと恥ずかしかったので遠慮して部屋に戻った。
私には園内にお母さん友達はいなかった。
少し歳が若いのと、いつも走ってるのとで、誰とも交流がもてなかったんだ。
だから保育園の前の
『卒園式』
と書いて、ピンクで飾り立てられた看板の前で写真を撮ることはなく、先生にだけ挨拶して、そそくさと帰ったんだ。
でも、私には分かるからいいんだ!
ネクタイとカーネーションと2人のアップの写真で、これがソウタの卒園式だったって、私が分かればそれでいい!
ソウタもいよいよ小学生!
ドキドキすんね!
母さんもやで!
