Aはいつだって、私を頼りにしてくれました。

いつも、今忙しいですか?後で話聞いてもらってもいいですか?って…


でも私が忙しすぎるあまり、待機室にはほとんど戻れず、

気づけば早番のAは帰ってしまっていた…というのがしょっちゅうでした。


女の子同士のアドレス交換が厳しく取り締まられていたため、
話すらまともに聞いてあげられない。

彼女のために、もっと私にできることがあったんじゃないか。

私の心に、未だに引っ掛かっているのです。



彼女は一度退店したものの、家の借金のために出戻りし、それでもやはり辛くて辞め…

しかし結局風嬢をあがることはできず、家のために今は別の店で働いていると、風の噂で聞きました。

ボロボロに傷ついた体で…


――止めた方が良かった?

止めたところで、彼女の家族の生活が大変になることは目に見えている。

――私が稼いだお金を、渡していれば何とかなった?

母子で働いても足りないのに、そんな大金…私には工面してあげる勇気なかった。


たとえ少しばかり援助してあげたところで、一時凌ぎにしかならない。

彼女のことも母親のことも、私は救えなかったのです。