触れた先が、
心地よいと思ってしまう。
もっと、触れたいと思う。
「颯、あたし
「汐音はしゃべんなくていいの」
あたしの声を遮るように、
そしてグッと力強く握られた手。
ドクンと心臓が跳ねる。
拓也の手とは違う、
ゴツゴツして大きな…
男の子って意識させるような手。
「汐音は、
俺のことだけ考えててよ」
アーモンド形の瞳が、
笑みを作る。
クルクルと表情の変わるその顔に。
目が向けられない。
思わず颯の手を、
強く強く握り返した。
少し驚いたような顔をして、
そのあとに眩しい笑みを向ける颯。
「汐音」
名前を呼ばれて、
笑みを向けられるだけで
颯のことしか考えられなくなる。
たった一度だけ触れた唇が
恋しくなる。

