部屋の前まで着いて、
インターフォンを押そうとして。
でも緊張のあまり、
何度も押そうとして
止めての繰り返し。
頑張れ、あたし!
颯に会いに来たんでしょう…?
はあっと息を吐きだして、
ボタンに手を伸ばすと
スゥッと吸いつくように
ピーンポーンという音が聞こえて。
出なかったら、
どうしたらいいの?
黙って帰るなんて…できない。
「………はい?」
っ…!颯の声……。
掠れて、少し鼻声の颯の声に
一瞬固まってしまう。
「……はい?誰……?」
「あ、あたし!颯、開けて」
「え……?誰?分かんない」
あ、あたし名前言ってない。
そう気がついたのは、
ドアが開いていて。
「え、汐音……?なんで」
「っ…熱、大丈夫なの?
心配で…来ちゃったじゃん!」
灰色のスウェット姿で、
頬を紅く染めた颯に
やっぱり熱があるんだって
そう思うのに。

