「拓也ー、
まだあの子と付き合ってんのー?」



語尾の延びた、甘い声。

その声に乗って聞こえる、
愛しい人の声。


「うん、まあね」


…っ拓也の声だ。

繋がれたままの手が、
小刻みに震える。


まただ。いつだってそう。

拓也の周りには
あたしの知らない女の子がいる。

手をつないで、キスをして。


誰にでも優しくして。


彼女ってなに…?

あたしの存在って、
その子達以下なの?


「汐音、こっち向いて」


その声とともに、
グッと顎を上げられる。


視界の隅に、一瞬。

拓也と女の子が中庭の
ベンチに座ってるのが見えて、
すぐに隠れた。


颯のドアップになった顔で。


「は…やてっ……」


ドクンと鳴った心臓は、
近くにいる拓也のことを意識する。


バレたら…どうなるんだろう。