「蕾ちゃん、また寝坊したの?」 蕾の隣の席の松橋由紀がヒソヒソと話しかけてくる。 「寝坊なんてしてないぞ。 今日は服の着付けに少し手間取ったくらいだ」 「…。たまにはちゃんと制服で来なさいよ!」 呆れ顔の由紀に、蕾は舌を出して やだね とだけ言って机に突っ伏した。 「もうっ!!!」 頬をぷくっと膨らませて怒る由紀も無視。 蕾はまだ一度も授業を聞いたことがないのだ。 授業中は貴重な睡眠時間、そして自由時間。 蕾にとって学校とは、 決して学舎ではなく、 自らの王国、フリーダムであるのだ。