喚き続ける雅人を、亮が
「うるさい。他の乗客の迷惑」
と一喝して黙らせたところで蕾と由紀が降りる駅に着いた。


「じゃーな」

「ばいばーい」

「あぁ、気を付けてな」


叱られて恨めしげな顔をしている雅人を尻目に、涼しい顔でひらひらと手を振る亮はなかなかの強者である。


改札を通って人混みから抜け出すと、由紀の質問攻めが始まった。


「あの男の子とは本当になんでもないの!?」

「なんでもない」

「でも彼は蕾ちゃんに気があるんじゃないの!?」

「ないない。てかあいつのことなんて全く知らないし」

「蕾ちゃんは知らなくても、えーと及川脩?だっけ?は知ってたかもしれないじゃん!!」

「それじゃストーカーだろ。てか何でいちいち呼び方変えてるんだ?」

「どれが一番しっくり来るか考えてるの!!」

「‥‥あっそ。」




その後も「あの子」や「HE(なぜ英語?)」、「脩くん」など様々に呼び方を変え、
クエスチョンマークをつけて喋り続けた由紀が黙ったのは、北大路家の表札の前に来たときだった。



「明日はちゃんと聞かせてもらうからね!!」

「‥‥じゃぁ学校休「ダ メ !!!!」

‥‥‥‥まないし。」


松橋由紀、実は彼女が最強かもしれない。