「え、ちょ、蕾ちゃんっ!?」
「何やってんだあのバカ!!
おい、待てよっ」
現場の状況を掴めていない由紀たちも慌てて蕾の後を追った。
流石というべきなのか、シフォンミニにブーツ姿でありながら、蕾は100mを10秒で走れそうなほど速かった。
「おい、あれって北大路蕾だろ?
お前知り合いだったっけ?」
取り残された及川脩の元に彼の仲間たちが興奮ぎみに駆けよる。
「…別にそんなんじゃねぇ」
さっきまでの笑顔とは打って変わって、及川脩はどこまでも表情の無い顔でつぶやいた。
瞳は蕾の去っていった方向から反らそうとしない。
ふっ、と先ほどの蕾とのやり取りを思い出せば静かに零れる笑みを、
そっと手の甲で隠した。
「…諦めねぇからな」


