にっこりと微笑みながら、グリーンの携帯をパカッと開ける及川脩に、
ぽかーんと口を開ける蕾。
「あの、前にも言った気がするけど…あたし携帯持ってないんだよね?」
「うん言ってたね。
でもあれ嘘だよね。」
またまたニコッと笑う及川脩。
蕾は不意にハンドバッグを持つ手の力を強めた。
「さっきそのバッグの中に携帯入れるの見てたし。
――ね、教えて?」
ジリジリと詰め寄る及川脩。
手元の携帯から無言の圧力がかかる。
一歩、また一歩と二人の距離を狭め、蕾は少したじろいだ。
「さ、早く。
友達も待ってるみたいだし」
及川脩の言葉で横に目をやると、由紀たちが不思議そうな視線をこちらに向けていた。
その少し後ろには、及川脩と同じ学ランを来た何人かが同じように蕾たちを見ていた。
「ぅうう……」
蕾は観念したように、スパンコールが光るバッグからバラをモチーフにデコレーションされたピンクの携帯を取り出した。
及川脩は満足げな笑みを浮かべた。
「…って教えるかバーカッ!!」
ゴッ
「ぃ…てっっ!!!」
蕾は必殺弁慶の泣き所蹴りを及川脩に食らわせると、目にも止まらぬ速さで逃亡した。


