悪魔のいる教室

斜め上を向けば、薄暗い中に五十嵐くんの横顔。

表情はよく見えない。


次の言葉を待ってる間にも、パタンパタン、と足音がリズムを刻む。


「俺、『熊谷さんが佐久間の弱みを握ってんじゃないかっていう噂がある』って言ったよね?」

「あぁー……うん」


なぜに今、それを?


なんて考えながらも私はまた、あの香りを思い出していた。


……そういえば。

これまで何度か悪魔と密着する事があったけど、あの香りがしたのはあの日だけだった。


本当に微かな甘い香り。

悪魔らしくない、バニラの香り。


なんだったんだろう、あれは。

もう一度聞いたら、悪魔は答えてくれるかな?


「それで俺、気づいたんだけど──」