悪魔のいる教室

「クマタ」


聞き慣れた、低い声。


あれから下駄箱に辿り着き、玄関を出て涼子達の影に隠れるように俯き気味に歩いてた私。


実を言うと、下駄箱に到着した時点で既に彼の存在には気づいてた。

不自然に人が距離を空けてる壁ぎわ、そこから頭1つ分くらい飛び出した茶色いアシメウルフ。


だいたい、こんなあだ名、呼ぶ人は1人しかいない。


現状を受け入れる覚悟を固めつつ、後ろを振り向いた。


案の定、予想してた人物がいて。

壁にうっかかりこちらを見ている。

さらに、傍にはヤスくんや他2名の派手な男子生徒。

みんなが避けて通るのも頷ける。


流れる人混みの中、まるで川に放り投げられた石ころのように固まってる私に、

『こっち来い』

茶色い瞳がそう言ってるような気がして。


心臓が、今にもかえりそうな卵みたいに騒ぎだす。


「……何?」


目の前まで歩み寄り、精一杯“普通”を装う私を、茶色い瞳が目を逸らしたくなるくらい真っ直ぐ見つめてくる。

睨んでなくとも、その目力は一般人より遥かに強い。


な、なんだよ……!!


こうして面と向かうのは恥ずかしいし、緊張するから、さっさと要件を言ってほしい。

しかもあっちで涼子達を待たせてる。