「はいよっ。」 私の前に差し出した。 「…この本。」 「確か、これ読みたいって言ってたよな!」 「どうしたの?これ…?」 「兄貴が買ったんだけど、読み終わったから、もらったんだよ。だから莉李に渡そうと思ってさ。」 結構前に話したことだったのに、ちゃんと覚えてくれていた。 賢志はこんな風に優しいところもある。 昼間、テスト用紙のことでムッとしたことなんて、帳消しになってしまった。