非日常standard【short】5

あたしは何が起こっているのか理解できず、うんともすんとも返事ができない。

放心状態とは、まさにこのことを言うのだろう。

いつものように交差点に立っていたあたし。

そして彼がいつものように自転車に乗ってやってくる。

彼があたしの前を通り過ぎる。

それを見送ってあたしは横断歩道を渡り、今いるとこまできた。

そして通り過ぎて行ってしまったハズの彼があたしの目の前にいる。

アレ…?

彼に呼び止めるられたという事実が現状を理解するという範囲を飛び越えている…

アレ…? 

「えと、あのぉ…」



彼は途切れ途切れ、声を詰まらせながら言った。


「川高…の、あっ通ってるんです、よね?」


「は・はい…」


「そうですよねぇ」


それからサトナカ君は俯いて何も話さなくなってしまった。


そんなサトナカ君を見ていてふと思った。

静止しているサトナカ君を見るのは、高1の、あのぶつかりそうになった時以来だなぁ…

あの時以来、サトナカ君は自転車に乗りあたしの前を通り過ぎるだけだったよなぁ。




「えと、えってぉ、ほら、この坂の下の横断歩道の前で、よくオレあっ僕とすれ違ってたの、覚えてませんか? 覚えてるわけないですよね……てか、あ、、、」



そう言うとサトナカ君は頭をかきながらハハッと笑った。


なんて言うんですか、この展開。

あたし、言っちゃいそうなんだけど………


その瞬間、頭の中で何かが弾け飛んだ。