亀村山町の不思議な出来事

「もちろんですとも。言いだしっぺは俺ですからね。鳥羽に言われてしまったのはしゃくですが」
 ポケットから四つ折にした紙を数枚取り出して、茉利亜に渡した。
 外見とは裏腹に、可愛らしいキャラクターの絵が描けるらしい。

人は見た目によらないのだ。

「これで一安心ですか?」

「勿論よ! 本当に立川さんも鳥羽さんも有難う! メカメ・シリーズは本当にあなた達がいないとやって来れなかった!」

「そんな、そんな。僕だって黒魔術が堂々と職業にできない今の時代に、ホソボソとでも収入があって副業として続けられるんです。嬉しい限りです」

「俺だってここ以上に面白い職場なんてどこ探してもありませんしね」
 確かに悪の組織をしている清潔な職場はそうそう無いだろう。

 三人の心温まるホームドラマは終わった。

そう、ここから本格的に悪の組織の幹部の会話なのだ。

「…ところで、ほうれん草は良いとして、本当にどうするんです? 僕の最高傑作は? 使いようによっては単なる兵器ですよ? 核爆弾を積んでないだけの」
 非核三原則を意識した何気ない一言だ。自衛隊基地内でも、米軍基地でもない一般のスーパーの店内で言うにはあまりにも重大すぎる台詞だ。

「分解して他のメカメの材料に回せば? 在庫そんなにないんだろ?」
 立川の安全そうな提案に鳥羽は怒った。

「もったいないじゃないか!」
 鳥羽は、モッタイナイ精神を発揮した。

「その点は私に任せて。同級生にスゴイ子がいるから、何とかしてくれると思うわ。使い方を知らなければ大丈夫なんでしょう? 体力あるし、正義感もあるし、モラルもある。頭も良いけどチョッと間が抜けてるから大丈夫よ」
 何処が大丈夫なのだろうか。しかし、茉利亜の説明は二人に伝わったらしく頷いた。

「なら任せましょ。いつまでも放置しておくわけにはいきませんしね」

「間が抜けてるってとこが気に入りました。任せますよ」

「成立ね」

 ちょっと待て、そんなに簡単に決めて良いのか?