自称・正義の味方所属機関で、ある日電話が鳴った。
電話がなること自体は珍しくないが、最新ファクシミリ付きの隣に黒電話が置かれていることが珍しかった。
 
今回はファクシミリ付きが鳴っていた。
しかし、受話器を取る気にはなれずにしばらく放置していたが、それでもやかましく鳴るので渋々受話器を取った。

「アイスマンか。何の用だ?」

『納涼《すずみ》さん! フレアマンはまだ見つからないんですか?!』
 予想していた通りの相手だったので、出るんじゃなかったと後悔した。

「二週間ほど行方不明になるそうだ(おかげで助かってる)」

『そんな! きっと悪の組織、デス・ウォッチに捕まったんだ! 早く助け出さなきゃカッコイイ怪人にされちゃう!! 早く助けなきゃ!』

「そうしてくれ(ると助かる。さっさと改造してくれ)」

アイスマンは何事かを叫び続けているが、面倒なので受話器を置いた。
 
 アイスマンは心配している、フレアマンは元気、自分が知って入ればなんら不安は無い。ならば今日も平和だ。

 そんなことより明日の天気の方が重大だ。雨になればいいのに。
明日こそは移動パン屋でメロンパンを買うのだ。雨になればいかに人が集まろうとたかが知れている。先々週は晴れたために学生でごった返し、売り切れてしまったが明日こそは希少なメロンパンを買うのだ。

  雨になれ雨に!

 切に願う自称・正義の味方所属機関・所長であった。


___同じ日
フレアマン捕獲の濡れ衣を着せられているとも知らない、自称・悪の組織《デス・ウォッチ》では、組織の運命を左右するような重要な会議が開かれていた。

「未だ打倒フレアマンをしていないのだ! このまま悪の組織に主軸を置くのが当然!」

閉店後のスーパーの店内、従業員用休憩室でパイプ椅子が四つだけの場所で老人が興奮した面持ちで立ち上がった。