亀村山町の不思議な出来事

 どこをどう見ても、仲良しにしか見えないんだけど。
 仲良しのレベルが高校生にしては低いようにも見えるが、あまり気にしないでおこう。

 田所君も編元君も案外周りと溶け込んでるように見えて、全然溶け込んでないからなぁ。私だってちょっと浮いてるけど、その私からってことはよっぽどってことかな?

 田所君記憶力異常なほどあるし、体力も元陸上の高橋先生から逃げ切れるくらいあるし、頭だっていいのにテストの答案を問題用紙に書いてよく先生悲しませるし。
 編元君も田所君と張り合えるぐらい体力も頭もあるし、天然がないからさらにいいんだけどちょっと腹黒かったり、猫的な所があるから。
 なんか普通の高校生っぽくないのよねぇ。


 …うちの構成員になってくれたら面白いのに。
 でも、部下が同学年の知り合いってのもなぁ。向こうにしたら上司が同学年だし、それって難しいよね。

 
 やっぱりメカメはこのくらい忍耐力があって、不思議系の田所君じゃなきゃ無理よね。編元君じゃ断られるの分かってたし。田所君って押しに弱いし。

 ちらりと竜司の鞄から顔だけを出しているメカメを見た。何の表情もうかがえない。

 大切にしてもらいなさいよ。元・対フレアマン用兵器。
 心の中でそう語りかけると、メカメがこちらを向いて不思議そうだった…そんな気がした。

 明らかに私を見つめているメカメ。一体何なんだろう。製作したのは鳥羽さんだし、起動したのは田所君、私はメカメに今の今まで知られるようなことはしてない。なのに何故私を見るのよメカメ。それとも、カメロンパンの影響かしら…。

「どうした? 柴」

「えっとそのメカメが見てるんですけど」
 不審そうに鞄から顔を出すメカメの視線方向を田所君も編元君も確かめる。確かに私の方向を見ている。

「柴さんリップクリーム付けてる?」

「え? まぁ」
 
 リップなら持ち歩いている。唇が切れると何かと支障があるので常に鞄とポケットにある。
 ポケットの分を取り出す。
「…これ?」
 リップの外装にはかわいいデザインがあり、味と匂いのあるものだ。
 黄色いレモンが味と匂いを表していた。

「「それだ」」
 二人して同じことを息もぴったりに言う。やっぱり仲が良いんじゃない。