亀村山町の不思議な出来事

 案外、俺はこのメカメを気に入っているんじゃないだろうか。まだ会ってから24時間も経っていないのに。いや、12時間も経っていない。

「そんなことないって」

 天に応えたつもりだが、自分への応えにもなっている。
 そんなことないって……ひと暴れして、喧嘩して仲良くなるなんてのは作り話の中だけだ。その話に雨降って地固まるのたとえがよく使われるが、そもそも地がないから固まりようがない。

 例えあったとしても、このメカメなら浮いているから無視するだろう。

「そう? 慣れてると思うけどね」
 まるで自分は何でもお見通し。そんな笑い方をする。
 お前は口だけ残す不思議の国のアリスのチャシャネコかっての。

「慣れてないって」
 否定をすればするほど怪しまれるパターンか。そして堂々巡りをするのか…めんどくせ。なんとかならないかな。

「ところで竜司いい加減その怪我何とかならないのかい」
 
「そんな短時間で治るか」

「治しなよ」

 頭がいいはずなのに時々妙な事を言い出し強制する。今のように。
 できないと分かっていて、できないのを困る顔が面白いのだと本人が以前言っていた。はた迷惑な。それを理由にチョップをくらった覚えがある、確か近所のスーパーで定期的にやってくる自動車の移動パン屋から”伝説のカメロンパン”を二つ買ってこいとか言って、俺も欲しかったから昼休みに抜け出して買ってきたら何故かやられて驚いた。
 あのチョップは失敗しなかったからそれに対してのものだな。失敗すると思ってたんだな天め。
 まぁそれ以上に驚いたことがあったからそんなに気にもしなかったが。まさか、高橋や校長までもが買いに来てたとは…。
 東高校ってこんなところなんだと、ある意味感心したが。

「無理なら保健室でばんそうこう貰おう。まるで僕がやったみたいじゃないか」

「見えないところはお前だろうが」

「見えないならいいじゃないか」

 お前は不正に暴力を働く警察官か、裏金を受け取る政治家かっ。といっても堪えないだろうから止めた。それにいう気力がもったいない。

「それより保健室開いてんのか? こんなに朝早く」

「二日酔いで保健室に泊まったらしいよ」
 どんな学校だここは。