亀村山町の不思議な出来事

今思い出すだけでも恐ろしい。
昨日、天を経由して俺に渡されたメカメは単三電池を入れた途端に目が赤く光り、勝手に動き出した。
 元々メカメは自分で判断して動く、自立したおもちゃだ(それが原因で討議されている点もあるが)。
 だが、メカメは亀をモチーフにしているせいか動きはそれほど速くない。しかし、俺のところに来たメカメは速い! しかも、

「つかあのメカメ宙に浮いたぞ! なんだありゃ?!」

「…・・・すごいね。で?」

 天が妙な顔をする。そりゃあ驚くだろう、そこらへんのおもちゃが勝手に宙に浮いたら。
 ひょいと俺の後ろを指差した。

 振り向けばそこに・・・・・・

「げっ! ついてくんなって言っただろ!」

 例のメカメが、丁度目線の位置に浮いていた。ビニール袋を引っさげて。

「確かに……浮いてるね?」

「だろ! 羽もないのに浮いてるんだぜ。種も仕掛けもわかんねーんだよ」

 紐で吊っているわけではない。プロペラのようなものがついているわけでもない。ただ、ぽつんと浮いている。
 なんだ?! 反重力装置でも搭載してんのかこの小さな体に。どこの不思議物質だ!

「というよりさ。これの殴られたのかい君は?」
 不服そうに天はメカメを指差す。
 どうやら、こんな小さなメカメに俺が負傷したのが気に食わないらしい。だが、それと天が殴ってくるのには何の関係も無いように思うが。

「殴られたというより頭突きをかまされた。手は短すぎて届かねぇだろ。それに空気砲みたいなのを撃ってくるぞ」
 短い手を甲羅の中にしまったかと思うと、これまた短い円柱状の物を手にそこから空気を圧縮したようなものを撃ち出してきた。一体どうなってるんだか。

「へ~やっぱり違うね非売品は」

「そうだな・・・今日あたり柴にきいとかなきゃな」
 人を廃品処分場扱いした理由をしっかり聞かなければな。柴のやろう…。
「それよりお前は帰れ! ダンボールの中に入ってろ」

 メカメに向かって命令するが表情は変わらないし、他のメカメみたいに喋らないし、反応もよくわからん。俺の言葉をどう受け取っているのかすら分からない。