亀村山町の不思議な出来事

――――翌日。
 早朝の川がまだ登りきらない日を受けて、きらめいている。
 今日は運良く川から霧のようなものがたつのが見られた、朝もやといかないまでも、なかなか情緒があると俺は思う。よく夏に人が流されても。

 自転車をキコキコいわせながら、8時過ぎには通勤ラッシュの道を一人行く。時折マラソンランナーが向こう側から来て通り過ぎていく。
 
 ゆっくりとペダルをこいでも学校までそれほど時間はかからない。もうちょっと朝の通学路を楽しみたくても仕方がない。それに、少し足りないぐらいが丁度良い。

 門をくぐり、自転車置き場のいつもの位置に自転車を置き、鍵をかけ、下駄箱に靴を置き上履きに履き替える。下には、外も内も関係なく泥まみれにする奴らのせいで今日も土山がある。上には、荷物置き場と勘違いしてる奴らが鞄やらゴミやらを置き散らかしている。紛失したと言う奴に限って、ここに置いていて撤収されている。自業自得だ。
 
 クラブ勧誘のポスターを横目に階段を四階まで上がる。これが朝で一番疲れる。
 いつも通り教室に一番乗りで入った。


 と、思ったのに。

「やあ竜司おはよう。早いね」

 天が俺の席に座っていた。

 見なかったことにしてドアを閉めた。

「嘘だろ」
 呻くしかなかった。何であいつが俺の席に座ってるんだこんなに朝早く!
 立ち去るべきか、留まるべきか考えている間にドアが開いた。

「なんで閉めるんだい?」
 チョッと不機嫌そうに、しかししっかりと俺の鞄を掴んだ。

「悟れ! ってか何で俺の席に座ってる?! そしてなんでこんなに早い?」
 一気に問いかけたので詰まるかと思いきや、返事の代わりに教室から出て、右手を小さく引いて、鋭く顔にめがけて振った。
 首を横にひねると親指が頬をかすった。

「竜司こそ悟りなさい。昨日のメカメがどうなったか聞きたくて早起きしたんじゃないか。それよりその傷どうしたんだい? 僕以外に殴ったヤツがいるなんて!」

「キレるとこそこか!」
 昨日の帰り際に天が不意をついて殴った。そことは違うところに殴られたような腫れが顔にあるのは知っている。
「・・・メカメだよ」