亀村山町の不思議な出来事

 メカメだった。しかも、今までに見たことのないような。

 今まで店頭などで見たことがあるメカメと同じように箱詰めされているのは同じだが、持ち歩かれていたり、どこかに乗せられているメカメとは違う。

「顔が怖い」

 そう、通常のプラスチックの身体をもつメカメは、爬虫類愛好家がため息を漏らすほど一般向けに愛らしいスタイルに愛らしい顔を持つ。
 しかしこのメカメ、見た目が金属の身体でしかも溶接の継ぎ目らしき所が見える。顔も饅頭を下の部分へこませたみたいな所に、ちょっとだけ口らしきものが見える。
 無骨さがありありと見える。

「あー本当だね」

 覗き込む天もほとんど同意見のようだ。どうやら、初めてみるらしい。

「誰からかいい加減教えろよ」

 箱に貼られたセロファンのせいかも知れないと、とりあえず開けてみる。案外マジックセロファンみたいなのがあって、見た目と中身が違うのかもしれないと淡すぎる気持で。多分、大手企業なんかが開発してて売上を伸ばしてるんだと勝手に想像しながら。

 しかし、開けてみても中身に変わりはないし、逆に無骨さがはっきりとした。しかもだ、背中の部分も模様のような溶接の痕が指先に伝わる。手も足も三角で本当にメカメだろうかと疑ってしまう。
 こんなのじゃなかったよな。

「柴さんからだよ。ほら生徒会書記の」
 やっと白状したかと思ったが、柴からは貰う理由もない。第一同じクラスでもない。何度か顔を合わせたりしたことがあるだけで親しい仲では、全くもって無い。
 それこそ貰う理由が全くない。
 最も、こうしたプレゼントを貰うほど仲の良い奴なんてはじめから俺にはいないのだが。

「ちょっと処理に困ってね。手元に置いておくのも困った状態だから僕に相談してきたんだよ。丁度君が欲しがってたのを教えたら『田所君なら大丈夫』ってくれたんだよ」

「俺は廃棄処分場か」

 そういうことか、いらなくなってくれたわけだ。けっこうな金額のメカメを? しかも単なる同級生の俺に? 何の行事もない今頃? 『田所君なら大丈夫』? なら、ってどういう意味だ。