達也は、なにがなんだかわからない状態だったが、幸田さんの父親に誘われるまま、ある小さなバーに連れて行かれた。

どうやら彼はここ最近の幸田さんの様子などを聞きたかったらしい。

達也のついたウソのおかげで、彼は達也と幸田さんが友達同士なのだと思いこんでいるからだ。

二人はカウンターに隣同士座った。

そして、幸田さんの父親がウィスキーを達也の分も含めて注文した。

達也の心はいまだ正常に動いておらず、達也はただ黙ったまま座っていた。

そんな様子を察してか、幸田さんの父親はグラスに注がれたウィスキーを一気にグィッと喉に流しこみ、深いため息をついた後、静かに「幸田さん」の子供の頃の話を始めた。



「あの娘は子供の頃からあまり気の強い方ではなくてさ、学校にも上手く とけこめず、友達を作るのも苦手な子だったんだよ。」


達也はまるで自分のことを話されているような気分だった。