彼女の不在を知り、すっかり肩の力が抜けてしまった達也だったが気分を切り替え、
久しぶりに映画をレンタルすることにした。

1年間の間で習慣になってしまっているのか、達也は今日もまた「例の映画」も一緒
に借りていこうと思った。

が、めずらしく「例の映画」は誰かにレンタルされていた。

それから毎日、達也は春休みに入ったのを利用し、レンタルビデオ屋に通った。

達也の幸田さんへの告白の意志は強固たるもので、毎日、 「今日こそは、今日こそ
は!」
と、押さえきれない緊張と戦いながら、しかし必ずレンタルビデオ屋に足を運んだ。


だが、2週間もの間、毎日何時間もレンタルビデオ屋の店内をうろついているのにも
かかわらず、彼女は出勤してこなかった。
そして、妙な偶然か、達也がこれまで毎週借りていた「例の映画」も一向に返却され
なかった。

いったい誰が、あの「例の映画」を借りているのか・・・。
そして、なにより何故「幸田さん」は出勤して来ないのか。