『なあ、詩織から何か言われたか?』

「ああ?」

夜中に三原から
電話がきた

あまりにも長いコール音に
俺は携帯を手に取った

『詩織、泣いたんだろ
お前の胸で』

「ああ…えっと」

俺は曖昧に言葉を濁そうとした
眠い頭では
何を言い出すか
わからないから

『いいんだ
わかってるから
下駄箱に来たとき
お前の制服が濡れてたから』

「泣いてた」

『で? 何か言ってたか?』

「何も言ってない」

『嘘だろ?』

「何か言うなら、女友達じゃねーの?
俺にはわからねえよ」

三原が黙った
俺は布団の中で
体を動かすと
起き上がった

部屋の電気をつけて
壁を見つめた

1分くらい沈黙が
続いただろうか

三原が口を開いた

『俺、1年のときから
東條が好きで何度も告ってた
でも何回も振られてさ

だから夏におっけーをもらったとき
すげぇ嬉しくて
すぐにヤッちまった

初めてのデートで
すぐに…
そしたら次の日に
別れたいって言われて

それから1ヶ月に1回のペースで
別れ話を切り出される

俺、別れたくないんだ』

よりよって
俺に相談かよ!

俺は頭を掻いた

「きちんと話せば
わかってもらえんじゃねーの?」

適当に答えた

俺には
三原の想いを
わかってあげられる自信はない