智江の思いとは裏腹に、俊光とあの娘との関係は続いていた。


彼がコンサートや仕事で家を開ける時は智江はその都度あの娘と会っているのではと、疑う様になっていった。


「あの娘、名前何でしたっけ?」

「誰だよ」

「あなたが凄く可愛がっている生徒よ」

「生徒には全員同じように接しているよ」

「そうかしら、ほら、あなたに土下座して頼んできた娘よ」

「ああ、雪依のことか」

「雪依さんと言うの?随分綺麗になっていて驚いたわ」

「そうか?」

彼は話題を変えたい様だった。

「瑠美、明日遊園地でも行くか」

「いいよ、友達と約束あるし」


「何だよ、まさか男じゃないだろうな」

瑠美は冷めた眼で俊光を見て、自分の部屋に戻った。



「何だよ、もう反抗期か」


彼はまだ気付いていない。

瑠美も雪依という女の存在に気付いていたことを。