「すげーじゃん」

そこは全国的にも有名なIT企業だ。
インターンだって相当な倍率だったはず。


しかし尚基は俺の言葉に嬉しそうにしながらも首を振った。


「お前には言われたくないって」

「なんでだよ」

「お前こそAIJのインターン行ったんだろ?」


AIJは国内最大手の広告代理店で、俺の就職志望先でもある。

つい最近までそこのインターンに参加していた。


たしかにインターンがそのまま就活にも影響する企業だから半端じゃないほどの競争率だったけど、俺はそれなりにしっかり備えてたんだ。

それに、父親がそこの社員だし部活のOBにも社員の人がいるから比較的優位ではあったと思う。


「どうだった?就職希望企業ランキング上位のAIJは」


ただの好奇心だと思うけどやたらと興味深そうに聞いてくる尚基に俺は真剣に考えてみて、やっぱりこれしかないと思って口に出した。

「楽しかった!」


すると尚基は一瞬目を見開いて、すぐにため息をついた。


「お前にはまじで尊敬するよ」


ちっとも尊敬してる口調じゃないけれど、一応お礼を言う。

「さんきゅ」



すると尚基の背後から、女の子がこちらに走り寄ってくるのが見えた。

俺の視線に気付いた尚基が後ろを見て、あ、と声を漏らす。