就活ラブ -gleam-

というより、静岡県民はみんな静岡が好きに違いないと思っている。


けれど俺の期待も虚しく、長田さんは全く盛り上がることなく「S市だよ」とそっけなく言うだけ。

S市は県内では対極に位置する市だからたぶん共通の話題はないに等しい。

「じゃあ同じ県でも遠いなー」と言いながら俺は残念に思った。


「地元で就職とかは考えてないの?」

「うん。もう地元って言っても帰る場所ないから」

「そうなんだ。じゃあ家族はどこに……」そこまで言ってから、長田さんの表情がやけに暗いことに気付いた。

あ、もしかして。

俺は慌てて謝った。

「って、ごめん。聞いちゃいけないことだった?」


家族の話題なんて、簡単に振るべきじゃなかった。

気になったことをすぐ聞いてしまう癖は直さないといけないなと、改めて反省する。


俺はばつが悪くてとても長田さんの顔が見れなかった。


けれど長田さんが一生懸命首を振って「ううん。気にしないで」と言いながら笑ってくれたから少しだけ救われた。



同じ過ちは繰り返すまいと決意して、俺は別の話題を探す。

「そういえばさ、アキちゃんって大学ではどんな感じなの?」