繚乱狂宴

「すまない……怖がらせてしまったな……」

幽の頭を優しく撫でる。

それに落ち着いたのか、

「いえ……センパイは、間違ってません……あの、犬が悪いんです…襲ってきた…から…」

幽は精一杯言葉を発す。

「センパイは……悪くないです……」

涙をポロポロ零しながら、幽が笑う。

嘘に塗れた偽りの笑顔。

本当は、僕を責めたくない。

僕を悲しくさせたくない。不安にさせたくない。

そんな感情から生まれ出た、偽りの笑顔。

「すまない……すまない……」

謝りながら、幽を抱く。

「センパイ……もう、戻りましょう…。センパイが悲しんでる姿なんて、見たく、ないです」

幽の言葉は、とても包容力があった気がする。

手を放し、廃材に向かった。

張られていた青いビニールシートを引っぺがし、手に巻き付ける。

ビニールシートの下からは、さらに多くの不法投棄物が身を潜めていた。

ビニールシートを犬の亡骸に掛け、そのまま包み込み、視界に入らないところへ移動させる。

地面についた血はどうしようもない。

時間の経過に任せるしかないようだ。

「じゃあ……行こうか」

幽に話を戻す。

今までの作業を茫然と見つめていた幽は、我に帰って、

「はい♪」

できるだけ、明るく、返事をした。