繚乱狂宴

「そう言えば、小夜ちゃんは?」

「小夜ちゃん?」

いきなり発せられた、聞き慣れない言葉に首を傾げる。

「もう一人の『年が近い子』なんだけど……幽ちゃんから聞いてない?」

「いえ、まったく」

そもそもそんな人物初耳だ。

あの幽が忘れていたとは考えにくい。

「お隣の病室だからさ。顔、見せてあげて。ちょっとばかし冷めてる女の子だけど」

隣にも患者が居た。

小夜という女の子。

「幽ちゃんは苦手みたいなのよねー。あの子。私も苦手だけど」

どうやらかなりの冷め具合らしい。

「それじゃ、よろしくねっ」

何がよろしくなのか。

また厄介事を押しつけられた気がする。

別に僕が会いに行く理由が無いし、命令される筋合いもない。

だが断る理由もない。

『気が乗らない』で断れたら、世の中どんなに苦しくないことか。

とりあえず、幽と話をして情報を集めるか。