転院初日、

その時の第一印象は、とりあえず田舎だった。

辺り一面田んぼや畑、見なれたビルやマンションは影も形もなく、平凡な民家がちらほら建っている。年月の隔ては侮れない。

視界の約八割が緑一色で染まっていた。

確かに、静養には最適な場所なのかもしれない。

しかし退屈だ。

火野 晶は体勢を変え、窓の外へと目をやる。

環境の変化による身体の異常は今のところ見られない。

でもやる事もなく、ただただ呆けて過ごしているのは時間の無駄だ。

都会の生活では、毎日時間に追われるように忙しかったからかもしれない。

はぁ、とため息をつき、ベッドから身を起こす。

窓からの景色はこれといっていいほど特徴的なモノは無く、

個室なので周囲に人もいない。

つくづく嫌になる。

何の病気だかは記憶にないが、早く治療してここを退院しよう。

何事も、病気には安静が一番だ。

ベッドに潜り込み、夢の世界へ旅立とうとした時―――、

部屋の扉が開く音がした。