「これです」

と佐藤は私にそのガラスケースを示した。

それは細かな飾り彫りを施してある木製の枠にガラスがはめ込まれた物で、中にはヴァイオリンが入っている。

他のガラスケースと比べると豪華な造りだ。

「何でも、もう亡くなられた偉いヴァイオリン弾きさんからいただいたものらしくて、このヴァイオリンが元の持ち主の元へ帰りたくて放課後ひとりでに演奏を始めるって……」