扉の前まで来ると、わずかに開いた扉を開け、屋上へと踏み出した。

ひんやりと春の澄んだ空気を感じる。

目の前には、闇に包まれつつある空に月が浮かぶ。

クレーターまでもはっきり見えそうな程大きく、完全な円を描いた地球の衛星。

太陽を反射し、薄いベールのような卵色の光で地上を照らす。


その美しい月と私の間に、彼女がいた。