「安静にしていて下さいね」


検温のたびにそう言われる。

理由は聞かなくても簡単に分かるし、そうすることが、自分のためにはいいのだということもわかっている。

だけど、毎回毎回同じことを繰り返されると、逆にそれに反した行動をしてしまいたくなるのは仕方ない。

それに、どこかで病気だということを拒否したがっている自分がいた。

薬が効いているのか胸は全然痛まない。
体調的にも入院前となんら変わったことはないと思う。
きっと走ったりしなければ問題ないんだろう。

心の中で浮かびあがった誘いに抵抗する気は少しもなかった。

タイミングを見計らって、体を起きあがらせると私はベッドの下のスリッパを履いた。